私は小さい頃、ノーベル賞を受賞した日本文豪川端康成の著作を読んで、日本の伝統文化と日本人の美意識に魅了され、大学で日本語専攻を選びました。日本事情の勉強が進むにつれて、日本の経済発展に興味が強く湧いてきました。
日本は、東洋の奇跡と呼ばれ、約20年間で戦後の荒廃から復興し、飛躍的な経済成長を遂げました。国民経済成長の投影として、高度経済成長に支えられて発達してきたのは工業地帯です。その中で、アジア貿易の中心港神戸、大阪を擁する阪神工業地帯は目覚ましい躍進を遂げ、中堅、中小企業の集積度が高い、アジア向け貿易依存度が高いといった点に特徴付けられます。貿易に伴う労働・資本・財といった生産要素の移動と経済活動の集積現象との関係、または経済成長との関係、さらにそれはデジタル化の推進によりどのように変化していくのかといった問題意識を持って、日本の地域経済成長に対する理解を深めるために、日本の大学院に進学することにしました。神戸は、適切な調査・実証の地域であり、貿易立国の日本を実感できる理想的な都市であると思います。日本社会の一員としてここで身を置くと、「日本の良さ」と「日本の課題」を発見できます。
進学先の神戸大学経済研究科は、日本で最も伝統のある経済学研究の拠点で、経済に関する幅広い分野の研究・教育を行なっています。特に経済成長・国際経済学において世界的に活躍している教授が多く、最先端の研究に裏付けられる質の高い教育が行われています。ここで勉学・研究することで、経済成長に関する実践的な知識や幅広い能力を身につけられると思います。
かねてから神戸は貿易の拠点として栄え、世界で魅力的な国際都市です。ここでは、世界中から大勢の人が集まり、多様な文化背景と個性を持った人々と出会うことができます。学術のほか、私は積極的にボランティア活動と社会活動に参加し、異なる文化や生き方を持つ人々と交流し、お互いの理解を深めたいと思います。私の好きな神戸出身の作家陳 舜臣が中日交流についてこう語りました。
「海外に在住する中国系の人間として、日本人に中国のことを、よりよく知ってもらいたいという願望をいつも心に抱えていた。これを願望というより、私の本能だといっても良い。」
私は彼の言葉に深く感銘を受けました。世界へ積極的に発信することで、自分も中国と日本、あるいは世界をつなぐ架け橋になって世界の文化・経済交流に貢献したいと思います。
まことに光陰は矢の如しとやら、日本に留学しにきてもうすぐ半年を迎えようとしています。これまでの神戸での留学生活を振り返ると、多くの出来事が頭に浮かび、楽しくてとても充実した日々を過ごしていると感じます。
授業面では、神戸大学経済学研究科は多岐にわたる経済諸分野で講義を行なっていますので、興味のある授業を履修していました。学校の授業で最も印象に残ったのはELS-M課題研究(脱炭素社会の地域作り)です。この授業では脱炭素と地域課題解決の実践としてフィールドワークを実施し、洲本市の放置竹林問題の解決に向けてグループワークを行いました。同じ受講生の皆さんとチームを組んで、様々な意見を交換し、共同で作業をすることで、お互いに仲良くなったり、素晴らしいプロジェクトの提案を出したりしました。このフィールドワークを通して、脱炭素や持続可能な資源循環といった観点から地域社会が直面している課題について理解を深め、課題解決のためには地域コミュニティにおける人と人のつながりが大切であることを認識しました。それを踏まえ、洲本市でのプロジェクトを動かしていくために、他の受講生とチームを結成し、「洲本市との竹活用をテーマとした域学連携案」をテーマに9月で開催されるSDGワークショップ「神戸の未来、社会の未来、ずっと続く地球の未来」に参加する予定です。引き続き脱炭素社会の実現に向けて活躍していきたいと思います。
研究面では、日本における中国の輸入浸透が女性雇用に与える影響に焦点を絞って研究を進めています。貿易ショックが労働者に与える影響を分析した研究はすでに多数存在していますが、先行研究を色々と調査した結果、日本ではジェンダーギャップの視点からこの問題を検討する研究がまだ少ないことが分かりました。今の段階の研究というのは、シーシュポスの岩運びみたいなもので、望ましい成果が得られるかどうかは目処がつかなくて、悩んだり落ち込んだりすることが多いです。苦行だと思う時に、一番好きな映画「ショーシャンクの空に」のセリフが何度だって助けてくれました。それは「Get busy living, or get busy dying」です。ショーシャンクのように、チリも積もれば山となるのです。努力が必ず報われるとは思っていませんが、この大事な旅で後悔しないように努力をするべきだと思います。
生活面では、卒論や課題に追われる日々を送っていますが、日本での生活は大分慣れてきました。空いている時によく神戸の町を散策したり、美術館巡りに行ったりしています。自然と都会が調和し、異国情緒の溢れる国際的な現代都市神戸の魅力と個性に感銘を受けました。また、同じ寮に住んでいる他の外国人留学生と色々と話したり、助け合ったりすることで、知見を広げ、たくさん思い出を作りました。
最後に、残りの留学日数がどんどん少なくなってきて、後の時間を最大限に活用したいと思います。やりたいことを実現し、帰国の際に悔いのないようよりアクティブで輝く日々を過ごしたいです。
「光陰矢の如し」とはよく言われるが、留学生活が始まった日のことが昨日のように思える。気がつけば、卒業を間近に控え、神戸での一年間が終わろうとしている。振り返れば、多くの経験を通じて学び、成長することができた。
この一年間ですべての単位を修得し、修士論文を完成させた。神戸大学経済学研究科の授業はどれも充実していて、実証と理論の両面から最新の研究や実践的な知識を学ぶことができた。たとえば、空間経済学では、地域間の経済格差や産業集積の影響を学び、都市と労働市場の関係を理解する契機となった。国際貿易の講義では、貿易理論と政策の実証分析に触れ、指導教官の指導のもと、理論分析や統計手法の習得に励んだ。これらの学びを通じ、経済理論を実社会の課題に応用する力を養うことができた。今後はこの経験を活かし、社会課題の解決に貢献していきたい。
学業だけでなく、日本社会に対する理解を深める機会にも恵まれた。その一つが、言論NPOの短期インターンへの参加である。私は「東京・北京フォーラム」のSNS運営に携わり、日中間の政策対話の現場を間近で見ることができた。この経験を通じて、国際関係における市民社会の役割を改めて実感した。また、地域脱炭素プログラムにも参加し、洲本市の放置竹林問題の解決に向けたプロジェクトに取り組んだ。地域社会の課題解決に向けた取り組みを実際に体験することで、持続可能な社会づくりの難しさと重要性を学んだ。
多国籍な友人との出会いも、留学生活の大きな財産となった。寮生活を通じて、異なる文化的背景を持つ仲間と交流し、お互いの価値観を尊重しながら成長することができた。特に、日本人学生や他の留学生とともに過ごした時間は、日本の文化や習慣を深く理解する貴重な機会となった。これらの経験を通じて、単なる留学生ではなく、日本と世界をつなぐ一員としての自覚を持つようになった。
卒業後は、これまで学んできた知識や経験を活かし、社会課題の解決に貢献できる仕事に携わりたい。特に、経済発展と環境問題のバランス、ジェンダー格差の是正、国際協力の推進といった分野に関心がある。留学中に培った分析力や多様な視点を持つことの大切さを忘れず、社会に貢献できる人材を目指したい。
この一年間、多くの人々の支えがあったからこそ、充実した留学生活を送ることができた。指導教授の丁寧なご指導、教務係の皆様の温かいサポート、そして共に学び、励まし合った友人たちに心から感謝したい。特に、異国の地で共に成長し、未来について語り合った友人たちの存在は、何よりも大きな励みとなった。
この留学で得た学びと経験を糧に、これからの人生を歩んでいきたい。そして、日本と中国、さらには世界をつなぐ架け橋として、より良い未来のために貢献していきたい。