HUMAP  兵庫・アジア太平洋大学間ネットワーク Hyogo University Mobility in Asia and the Pacific

2022年度『派遣』

  • 氏名:H. T. [ 日本 ]

  • 受入期間:2022年10月17日 ~ 2023年07月24日
  • 受入大学:キール大学
  • 在籍大学:神戸大学


留学のきっかけ、目的

 私の今回の留学の目的は、外国の文化を体験することと、英語を話せるようになることの二つだ。第一に、日本と異なる文化を体験して自分の視野を広げたいと考えている。私の祖父と祖母は海外旅行が好きで、昔はよく二人で海外旅行に行っていた。ブラジル旅行のリオのカーニバルの写真を見せてもらったり、アフリカ旅行の野生の肉食動物のサファリの話や雄大なビクトリアの滝の話をしてもらったりなど、どれも日本とスケールが異なっており、ユニークで日本にいては体験できないような話ばかりであった。そのおかげで、昔から自然と外国の地理や文化に興味を持ち、日本と全く異なる文化に触れてみたいと思っていた。第二に、将来の職業の手助けとしたいと考えている。私は中学生のころから航空業界に興味を持ち、将来は英語を話せるようになって航空関係で企業の経営に携わる仕事につきたいと、漠然と思っていた。その後高校、大学では海運の企業や貿易に携わる会社などでも働きたいと思うようになったが、幅はありつつも、「英語を使ってコミュニケーションをとって、異なる国や文化を持つ人と仕事をしたい」という部分は変わっていない。おそらく将来的にもその思いは大きく変わることはなく、外国の人と意思疎通を行うことができる語学力が必ず必要になると思っている。
 そんな中で大学の交換留学制度を知り、学生の間に外国で一年間過ごす機会を得ることができるのは大変魅力的だと感じ、留学を決意した。今回の留学でその二つをともに満たすことができると確信している。
 また、多くの交換留学協定校の中から、私はドイツのキール大学を以下の二つの理由から留学先に選んだ。第一に、キールはドイツの大都市から少し離れたところに位置し、バルト海に面している非常に自然が豊かな地域であることだ。ヨーロッパの温暖で過ごしやすい気候に加え、大都市の喧騒を離れたのどかな地域で生活できる。第二に、キール大学は授業の形態として、講義よりもグループワークの授業が多いことだ。私は講義型よりディスカッションやグループワーク型の授業のほうが、自分が学習に能動的に取り組むことができ、学習内容が身につくと思っている。
 このような日本と全く異なる環境で、積極的に学習に取り組み、上記の二つの留学の目的をしっかりと達成したい。さらに、学校の勉強とプライベートの時間の両方を充実させたいと考えている。
 最後に、きっかけを与えてくれた祖父母や支えてくれた家族、友達、先生や学校のスタッフの方々、HUMAP留学生交流推進制度の方々を含めた皆さんに感謝を伝え、一年間、学習面・生活面でバランスの取れた充実した留学生活を送りたいと思う。

留学中の体験

私がここまでの留学で体験したことや思ったことを、大きく学習面と生活面に分けてお話しします。主観的というよりも、どちらかというと客観的な視点から、制度について言及しているところもありますがご了承ください。

まず学習面に関しては二点あります。
・学生の授業への態度が積極的
日本の学生と比べ、授業への取り組みが非常に積極的です。例えば日本では、授業中に先生が学生全体に向かって質問をしても、すぐ回答が返ってくることは稀です。そこには少なからず、日本人特有の、周りの様子を見ながら行動する、という気持ちがあるとは思いますが、先生が少し時間をとって、学生を指名して、指名された学生が回答して、という一連の流れが一般的です。しかし、こちらの授業ではまるで学生と先生が会話しているように質問と回答のキャッチボールが行われます。学生はとても積極的で率先して手を挙げて発言するため、先生が指名することはあまりありません。それは学生が授業に集中しており、しっかりと自分の意見を持っていて、それを言語化して表現することに長けているからこそできるものです。もちろんドイツをはじめ外国の高校までの授業では、自分の意見を述べるトレーニングがなされており、そもそもの教育の方向性が違いますが、それでもこちらの学生の授業や勉強に対する熱意は高く、非常に感心しました。

・英語のレベルが全体的に高い
ドイツの現地学生も、他の国からの留学生も、総じて英語のレベルが高いです。ほとんどネイティブスピーカーと同じくらいの速さで会話が続いていきます。その一方で、そもそも英語はあくまでもツールであり、それを通じて何をするか、というところに重きを置いている人が多いように感じます。また、正規で4年間留学をしている人や、過去に別の場所で留学をしたことがある人も多く、海外留学のハードルが日本の学生に比べて非常に低いことが感じられます。

生活面に関しては三点あります。
・楽しむときのメリハリがはっきりしている。
平日は各々の授業、課題に真剣に取り組み、授業後も自宅や図書館で自習をしている人が多いですが、週末など休みの日には思いっきり羽を伸ばしている人が多いです。例えば、2022年の大晦日に私は留学生の友達とハンブルクにカウントダウンに行ったのですが、いつも授業で非常にまじめに取り組む友人たちが、ハンブルクに行くまでの電車でお酒を飲んでべろべろに酔っぱらって、現地では叫びながら公道でサッカーをして遊んでいて警察に注意されていたり…。その遊び方が良いか悪いかはさておき、本当に勉強と遊びのメリハリをしっかりつけて、どちらも全力で取り組んでいる学生が多いと感じました。

・いい意味で人の迷惑を気にしない
ドイツの人は、他人の迷惑になるからやめよう、という考えがありません。電車の中でもご飯を食べたりお酒を飲んだりするし、周りを気にせず電話をしたりします。日本では他の人の迷惑になるからやめようという判断基準を各々が心の中に持っていますが、こちらの人は別に電車内の他の人の声が大きかろうとあまり気にしません。どちらかというと、「自分も迷惑をかけるときがあるから迷惑を掛けられても気にしない」という考え方の人が多いのかもしれません。例えば、保険会社の担当者とメールしていた際、「来週一週間、私は不在だから同僚の○○さんにメールが転送されます」といった内容のメールが送られてきたことがあります。どうやらチーム内で誰かが休むときは他の誰かが代わりにその担当も担っているようです。この慣習は、さらに言えば人々のストレスに影響を与えると思います。日本はストレス社会と言われますが、「和」を大切にする考え方は非常に素晴らしい一方、他人に気を遣いすぎるあまり、それがストレスになってしまっていることがあると思います。この点で、もう少し他人の迷惑に寛容になって、いい意味で人の迷惑を気にしないようになってもいいのではないかと思いました。

・学生への支援が手厚い
ドイツでは、学生を支援する制度が充実しています。(私は交換留学なので関係ありませんが)ドイツでは、国立大学の授業料は原則無料です。各セメスターのはじめに2万円~3万円程度の共済費を支払う必要がありますが、これを払えば学生は州全域の公共交通機関が自由に乗れるチケットが手に入ります。また博物館や美術館は学生料金が設定してあり、学生に安く芸術に触れる機会を提供しています。また、キールの場合は学生に100ユーロの支援金を提供しており、「税金から学生を支援するためにお金を使う」という考え方が広く共有されていると感じます。このように政府が税収を幅広い教育に活用することは、非常に先進的であると感じました。

以上になります。ドイツを含めた外国と日本との文化や学生の違いを知ることは、今まで気づかなかった新しい視点を持つことにつながり、非常に興味深いと感じています。残りの留学期間も、様々なことに興味を持ち、他の学生と交流を深めることでもっと充実した留学生活にしたいと考えています。

留学の成果、将来の目標

 まずは留学の成果について話したい。そもそも私は留学前の体験記で目標を二つ掲げた。一つ目は外国の文化を体験すること。二つ目は英語が話せることになることだ。
 一点目は、自分の視野が広がった点だ。実際に生活して人と関わる中で日本と外国の文化の違いを感じることができたと思う。例えば、自分から遊びに行こうと誘っているのにやっぱり今日は疲れたからと言ってドタキャンされたことがあった。印象的だったのは、何か悪いことが起きてもお互いに許し合える寛容さも持ち合わせていることだ。日本であれば非難されるかもしれない事もお互いに理解があるのは良いことだと思った。そしてそのような体験を経て、世界中の様々な価値観を知って自分の視野が広がったと感じている。
 二点目は、英語力の向上に加えて自分から話しかける積極性が必要だと知れた点だ。私は積極的に団体のイベントに参加し、外国人の友達との交流を図っていた。多くの人と話す機会を持つことで自分の英語力が向上したのはかなり良い成果だと思う。その中で気づいたことは、英語上達に一番必要なのは失敗を恐れず会話することだということである。私は留学の初期の頃は自分の英語力に自信がなく話しかけるのを躊躇していたが、自分よりも英語が下手な友達が自分から人に話しかけている様子を見て驚いた。そして拙いながらも楽しそうに会話を続けていた。それを見て以降、私も積極的に話すことを心掛け、最終的にかなり英語を上達させることができたのだと思う。
 また、この目標としていた二点のほかに、もう二点、留学の成果があると思う。
 一点目は、自分の価値観を見つめ直すことができたことだ。自分の普段の生活の居心地のいい範囲=コンフォートゾーンを出て1年間生活してみて、自分が本当に楽しめることやりたいことがはっきりと分かったと思う。私の場合は「外国の人に日本のことを知ってもらったり、日本のもの(例えば食べ物や製品など)を伝えたい」ことと、「英語を通じて外国の人と友達になったりコミュニケーションをとる」ことだと感じた。このように自分のことをじっくりと考える時間をとって自分の価値観を見つめ直すことができた。
 二点目はコミュニケーション力が向上したことだ。具体的には、自分の意見をはっきりと簡潔に伝える力が向上した。ハイコンテクストの日本語と異なり、ローコンテクストの英語では口に出して言わなければ伝わらない。そのため、直接的に自分の希望や意見を言う力が自然と身についた。初めはそのようにダイレクトに言うことに抵抗感があったが、その際に理由を付け加えることで言いやすくなると感じた。また、私はドイツに留学していたので相手も英語がネイティブでないことがほとんどで、簡潔な言い方で伝えた方がコミュニケーションがとりやすいことが多かった。そのため、自然とシンプルな言い方が身についたと思う。
 以上をまとめると、
① 外国で過ごすことで視野の広さが身についたこと。
② 英語力の向上に加えて自分から話しかける積極性が必要だと知った。
③ 自分のコンフォートゾーンを出て生活して自分の価値観を見つめ直すことができた。
④ はっきりと簡潔に意見を伝えるコミュニケーション力が向上した。
この4点が私の留学中の成果である。

 続いて、将来の目的について話したい。大きく二点あるが、一点目は就職先について、二点目は今後の生活についてだ。
 一点目の就職先についてだが、これは「留学中の成果」の三点目から関連している。具体的には、「外国の人に日本のことを知ってもらい、日本のもの(例えば食べ物や製品など)を伝えたい」ことに関連したことに従事したいと思う。私は留学中にオンラインで就職活動を行っていたが、この自分の価値観をベースにして就職先を考えることができた。
 二点目の普段の生活については、日本にいる外国人の手助けをしたいということだ。具体的には、自分の大学に留学に来た留学生の生活の手伝いをして、日本滞在を楽しんでもらえるような手助けをしたいと思う。また、日本にいる外国人の友達を作って長期的に仲良い友達になりたいとも思っている。
以上をまとめると、
① 留学を通じて感じた自分の興味関心に合う会社で働きたい。
② 日本にいる外国人を支えたり、友達を作ったりしたい。
この2点が私の今後の目的である。