HUMAP  兵庫・アジア太平洋大学間ネットワーク Hyogo University Mobility in Asia and the Pacific

2019年年度『派遣』

  • 氏名:熊野 友哉 [ 日本 ]

  • 受入期間:2020年03月30日 ~ 2020年12月23日
  • 受入大学:カーティン大学
  • 在籍大学:兵庫県立大学


留学のきっかけ、目的

 僕の留学の目的は主に2つあります。1つ目は在学中の兵庫県立大学で学んだ経済学を留学先のカーティン大学でよりミクロな視点で学ぶということです。このことは大学1年生の時に履修したミクロ経済学の講義の中で触れられた企業行動と産業組織論の分野に興味をもったことがきっかけの1つです。ミクロ経済学の講義では同じ市場におけるすべての企業で同じ生産費用で均一の商品を生産しているという仮定のもとで経済を分析しています。しかし、現実には同じ市場でもブランド品の存在やデザインなどによって消費者が買おうと考えるものは変化しうるし、お店の店員さんの接客の質によっても変化すると思います。私はスターバックスというコーヒーチェーン店で1年半ほどバイトをしていました。実際に働き、お客さんの購入する品物について関心を持ちながら観察する中でスターバックスの商品にブランド価値を見出して購入する人が多いと感じました。また、スターバックスでは労働者の人材育成に力を入れており,その結果としてサービスの質が向上し、顧客満足度を向上させていることにも気が付きました。これら2つの関心がきっかけとなり組織経済論という分野における企業の経営方法や購買選好の決定要因についてカーティン大学でより詳しく学びたいと考えました。カーティン大学の授業のシラバスを見たところ、消費者の心理、文化、生活様式が企業の経営行動とどのように関わっているのかについて扱っている授業をはじめ、よりミクロ的かつ実生活に近い経済学を勉強することができると思われる授業が多く見受けらました。それらを勉強するためにはカーティン大学への留学が必要であると考えました。2つ目は海外で実際に生活し、日本と異なる文化や考え方を直接学ぶことです。私は現在比較文化論を学ぶゼミに所属しています。卒業論文のテーマは日本のサービス業の接客の質が他国と比べて高い理由を日本人の国民性や文化的背景から明らかにした上で、このことが日本の生産性や過労死問題とどのようにかかわっているのかについて他国と比較する中で明らかにするというものです。具体的な手段として、国際色が豊かなカーティン大学で様々な国の生徒にそれぞれの国の接客の質とそれに対する社会の認識について直接質問してみようと思っています。さらに、現地の住人に上記の内容について聞き取り調査のフィールドワークをすることも取り入れていきたいと思います。こうした現地で得られた知識・情報を卒業論文に取り入れることができればより充実した卒業論文を書くことができると思います。また将来の目標は、英語を使う機会がある仕事に就いてグローバルな人材として働くことです。僕は英語を通じて他国の人とコミュニケーションを取ることが好きです。そのため、これまで語学力の向上や海外の方とコミュケーションをとる機会を増やす努力をしてきました。留学を通じてコミュニケーションの機会を増やし、更なる英語力の向上、異文化への理解を深め、より将来の目標を明確にしたいと思います。

留学中の体験

僕は2020年の3月に留学先のオーストラリアに渡航しました。3月はまだコロナウイルス蔓延初期であったためなんとか渡航できましたが、5月には帰国を余儀なくされました。そのため実際に現地に滞在できたのは1ヶ月ほどでした。滞在期間の内2週間は隔離生活をしなければならず、2週間の間は外出することもできませんでした。隔離生活終了後には元々滞在する予定であった寮に滞在し、ルームメイト5人と共同生活を行いました。一緒に食事をしたり、色々な話をすることができました。コロナウイルスが蔓延していたために外出は控えざるをえず、観光などはできませんでした。授業は全てオンラインで開講されていたので、帰国後もオンラインで授業に参加しました。コロナウイルスの影響で元々予定していた授業は受講できませんでしたが、レポート課題などが日本の大学のものと比べて膨大であったことなどから毎日多くの英語に触れることができました。また、オンラインを通じてグループワークなどを行なったので、英語のアウトプットもできました。

留学の成果、将来の目標

僕は2020年の3月に派遣先大学のある西オーストラリアパースに渡航しました。3月はコロナウイルスの蔓延初期だったので渡航できたものの、5月には帰国を余儀なくされました。また、それに伴って授業は完全にオンラインへと移行しました。帰国後7月末までは予定していた通りカーティン大学付属の語学学校の授業を受講し、留学前に強化できなかったアカデミックライティングのスキル、そしてノンネイティブスピーカーとの対話によってより精度の高いスピーキングスキルを会得することができました。そして8月初旬の期末テストで合格点を獲得したので後期からの正規留学が決定しました。しかし、コロナウイルスの影響で後期からの交換留学生への授業の開講を中止するとの報告を受けました。現地の留学生担当との話し合いの末に、カーティン大学が指定する授業であれば参加してもよいという許可を得ました。そのため、留学前に受講を考えていた授業を受講することはできませんでした。以下ではその指定された授業が留学前の目的達成にどのように関わったのかを書いていきます。留学の目的の一つとして、日本人の長時間にわたる労働と労働生産性や過労死問がどのように関わっているかについて学ぶことを掲げていました。受講した授業の一つのOrganizational Behaviorは人々の性格や態度が組織にどのように影響を与えるのかを学ぶことのできる授業でした。授業では労働生産性と従業員満足度の概念について触れられ、それらは比例関係にあるということを知ることができました。このことにより長時間労働は従業員満足度を下げる傾向にあり、労働生産性を低下させるのではないかという推論を立てることができました。また、日本人の長時間労働の原因を日本人の先天的な“勤勉性”によるものであると考えていた私にとってCulture to culturesという授業で得た、ある文化を持つ人々に見られる共通の性質は先天的なものではなく後天的なものであるという見解は私に日本人の“勤勉性”について再考させるきっかけを与えてくれました。また、同授業内で触れられた本質主義・反本質主義の概念を通じて比較文化論のゼミに属する私は、ある文化を自分の中の固定観念を通して見る危険性について知ることができました。これらの授業で通して得た知見を卒業論文の執筆を通して昇華させていきます。近い将来の目標にはなりますが、来年(2021年)の末にコロナウイルスが収まっていれば再度留学をしたいと考えています。実際に留学に行けたのはわずか1か月程度でしたが、その1か月で得ることができたことは大変多かったので、もう一度どこかの国に実際に中長期滞在したいです。