高校1年生のときに学校の授業に加え独学で英語を学び始めました。大学に入学しても毎日精力的に学習していましたが、上達に停滞を感じていました。やる気が小さくなっている気もしていました。「このままダラダラ同じやり方でやっても意味ない」。なぜかしっくりこない感覚と格闘し続けた結果、今までやってきた英語学習を改善する必要に気づきました。
そのために留学が一番良いと思いました。膨大な練習量・サンプルが得られるし自然と改善点や新しい気づきが得られると考えました。加えて、未知の環境で暮らせることも魅力でした。大学入学と同時に情報収拾を始め、前期試験後に英語試験の勉強を開始し9月に試験を受け秋に交換留学に申し込みました。
他の理由として、日系アメリカ人の親戚が同じ州に住んでいたことも大きなきっかけの一つです。『あの日パナマホテルで』の舞台となった街をもっとよく知り、第二次世界大戦中アメリカ西部に住んでいた日系人の繁栄・苦闘の歴史を現地で学びたいと思いました。留学が修了した今振り返ると、そこから得たものは大学での成果と同じほど重要でした。
―授業
基本的に一学期で16単位の授業(週3〜4)を一つ受講しました。
経営学、ダンス、統計学、数学、木工など幅広い分野を学びました。毎日予習と復習の繰り返しで大変だと思う時期はありましたが、どのクラスも丁寧に熱心に楽しむことができたと思います。
最も楽しくて学びが多かったのが春学期に受講した”Woodworking: Seating”です。少し紹介します。火曜日の夜5時半から9時半までの授業で、ベンチ・椅子・ストゥールの3種類から好きなものを選び、最初のデザイン設計・計算・木材選び・切断など全ての工程を受講者が行い、教授やアシスタントは必要に応じて助言や指導をするような本格的なクラスでした。中間、最終発表以外は個人がそれぞれ自分のペースで作業をします。
僕は比較的硬めの木材Western Mapleを使ったBar Stoolを完成させました。ノコギリと鑢の経験しかないほぼゼロからのスタートだったので、何度も何度も躓き、悩み、助言を貰いました。後半からは作業場が開いている金曜日と土曜日も通い、早い時は朝の9時から作業場が閉まる夕方5時まで作業や練習をしました。作業後はプールでみっちり泳ぎストレス解消をしていました。統計学の授業前に30分だけ作業をしたことも何回かありました。
今年度最後の作業場オープン日、6時間鑢をかけ続け、文字通り最後の最後でやっと完成し翌日のプレゼンテーションで自信たっぷり発表することができました。
かなり遠回りをしましたが、この一つの作品を作る過程で木工と自分自身について多くを学び、木の魅力に気づき、芸術(Art)の価値を実感しました。
―英語習得について
留学中特別にしたことはオリジナル辞書の作成でした。耳に入ったり、目に入った新しい表現や単語をその具体的な文脈とともにケータイのメモに書き記していました。誰が何を・なんの話で・どの場面で・どのように言ったのかまでメモしたので今見てもはっきりと思い出すことができます。映像でモノを理解したり記憶したりするのが得意な自分にとっては、かなり効果的だと気付きました。
自然と始めたことでしたが、表現の幅を広げるのに信じられないほど貢献しています。留学中は何度も見返して復習しましたし、帰国した今でも活用しています。
「すぐケータイいじってる」と色んな人に思われるかもしれませんが、そんなことは全く気にせずサクサク進めるのがコツです。今の学習に飽きてきた方は是非試されてみてください。
―贅沢な生活環境
大学のアパートはキッチン、トイレ、シャワーは共有で個人部屋は狭く、ショッピングセンターが近くにないので、不自由でストレスが溜まるかなと想像していました。しかし、実際行ってみると、とても広大な森林に囲まれた大学内の静かなアパートでした。
朝起きて外に出ると、樹木の匂い、今まで身近ではなかった自然の空気が肺いっぱいに満たされます。雨が降るとより一層深い匂いになります。勉強で脳や体が疲れた時や休日にはしょっちゅう森に足を運び、ツリーハウスやビーチで友達と時間を過ごしました。
僕は生まれてから20年間工業の町で過ごしてきたので、森に囲まれた生活は全く新しく至福の時間でした。森林浴で安らぎがえられると言われていますが、実際に何度もその体験をしました。とても健康的な生活ができたため、体調不良や生活の乱れは一度もありませんでした。
どういう生活環境が自分に向いているのか。また、最適な学習環境はどうしたら作れるのか、などについて今までになく考えるキッカケを与えられました。
―英語学習のアップグレード
大学での生活と休暇中のホームステイの10ヶ月の期間で英語学習の課題は明確になりました。今まで気づかなかった聞き取り・発音が苦手なリエゾンのパターン、句動詞の習得、、、など帰国後に優先して取り組むポイントがはっきりと見えるようになりました。
―様々なことに対する価値基準、考えの変化
よく留学関連の本や体験談で言われるように、単民族国家ではないアメリカでは日本で出会うよりも多くの種類の考え方に触れられました。健康、性差別、教育、社会身分など、それぞれについて色んな人が自分の価値観に基づいて積極的に情報を発信し問題を提起しています。僕自身、今まで気にもならなかった事について考え価値観が変わった(更新された)経験を何度もしました。国や地域が変わればまた違う体験をしていたでしょう。このことは留学の醍醐味のひとつでもあると思います。
決して楽ではありませんでしたが、この10ヶ月には信じられないほどの学びと感動がありました。簡潔な体験記になりましたが、読んでいただきありがとうございます。