HUMAP  兵庫・アジア太平洋大学間ネットワーク Hyogo University Mobility in Asia and the Pacific

2017年度『受入』

  • 氏名:LAU Shiew Wei [ マレーシア ]

  • 受入期間:2017年05月28日 ~ 2017年06月29日
  • 受入大学:兵庫県立大学
  • 在籍大学:カーティン大学


留学のきっかけ、目的

キトサン様微生物凝集剤の生産とRO膜式浄水器を用いた飲料水製造への適用

Shiew Wei Lau
Curtin University, Sarawak, Malaysia

私は、カーティン大学サラワク校化学工学科で講師をしていますShiew Wei Lauと申します。現在、兵庫県立大学大学院・工学研究科応用化学専攻・生物機能工学研究室の武尾准教授と共同研究をしています。この研究では、キトサンと言う多糖に構造の似た凝集剤をシトロバクターと言う細菌に生産させ、これを飲料水製造に適用することを試みています。飲料水製造に使う逆浸透膜(RO膜)は、濁りによる目詰まりに弱いので、凝集剤を用いてあらかじめ原水の濁りを除去する必要があります。このような前処理を施せば、震災や緊急時において泥や濁りの多い原水からRO膜式飲料水製造装置で効率的に飲料水を製造することができます。その目的で、安全な微生物凝集剤を大量生産するためには、微生物の凝集剤の合成経路や多糖化して分泌するメカニズムをよく理解する必要があります。
そこで、私の滞在期間(1ヶ月)の最初の2週間で、まず、凝集剤生産菌の取り扱い方法(培地の作り方や培養方法)について学びました。次いで、凝集剤の合成経路を突き止め、また、生産量を引き上げるために、凝集剤生産菌で特定の遺伝子を破壊する技術を学びました。この凝集剤は、UDP-N-アセチルグルコサミンと言う前駆物質を使って、アセチルグルコサミンと言う単糖を繋げ、多糖にして分泌されることが予想されていますので、この前駆物質の生産に関わる遺伝子を破壊することによって、凝集剤の生産を増加させたり、止めたりすることが可能になります。そのような目的で、遺伝子破壊用のDNA断片をいくつかデザインし、PCRと言う遺伝子増幅法を用いてその断片の調製に成功しました(写真は実験風景)。私は、今回が遺伝子工学の実験をやるのが初めてでしたので非常によい経験となりました。時間の制約の関係で、調製したDNA断片の細胞への導入には至りませんでしたが、このDNA断片は近いうちに武尾先生の研究室で遺伝子破壊に使用される予定になっています。
また、この滞在のもう一つの目的は、フラスコでの凝集剤生産と中空糸膜を用いた凝集剤の濃縮を学ぶことでした。これには微生物の大量培養が必要になります。しかし、私は、マレーシア出発前に妊娠していることがわかりましたので、武尾先生から大量の微生物細胞に触れたり、それを含むエアロゾルを吸わないようにアドバイスを受けました。そこで、この部分の実験は学生さんが実施するのを見学いたしました。
私は、これまでに、武尾先生の研究室で調製された微生物凝集剤とシグマ社から購入したキトサン(商品)を用いて、下水汚泥の脱水に関する比較研究をしてきました。そこで、兵庫県立大学の大学院博士前期課程の学生を対象に、大学院の講義「生物環境工学」でその研究成果を講義いたしました(6月19日)。この講義には数名の先生方にも来て頂き、貴重な議論をさせて頂きました。また、研究交流の一環として、大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻・生物圏環境工学領域の池道彦教授の研究室を訪問いたしました。阪大での研究室セミナーでは、前述の研究成果を講演し、有益な議論をさせて頂いた(写真)後、黒田真史助教の案内で研究施設の見学もいたしました(6月20日)。一方、兵庫県立大学への貢献として、工学部応用化学工学科及び機械・材料工学科の学部学生を対象とした「科学技術英語I」の授業で、気候変動に関する英語の授業を実施いたしました(6月13日)。
この滞在の間に、どのように微生物凝集剤を生産し、その生産をどのように上げるかを学んだので、帰国後は、私の研究室でも、各種凝集実験や脱水実験に凝集剤を使用できるように、凝集剤の生産を考えています。また、最後に、このような機会(兵庫海外研究ネットワーク(HORN)制度)を与えて頂きました(財)ひょうご震災記念21世紀研究機構に心より感謝いたします。

留学中の体験

留学の成果、将来の目標