HUMAP  兵庫・アジア太平洋大学間ネットワーク Hyogo University Mobility in Asia and the Pacific

2023年度『受入』

  • 氏名:C.L S [ マレーシア ]

  • 受入期間:2023年04月01日 ~ 2024年03月31日
  • 受入大学:神戸芸術工科大学
  • 在籍大学:北京理工大学

留学のきっかけ、目的

 私は小さい頃、ある日、テレビで偶然「劇的ビフォーアフター」という日本番組を見ました。いかに不便な住宅状況があっても、建築家は困難を乗り越え、すばらしい家を建てました。階段の角度や手すりの材質、子どもの成長にあわせて変化できる間取りなど、住宅の可能性をそこまで広げるのは想像もしませんでした。その時点から建築を憧れて、将来の道を決めました。

 今度貴重な機会をいただいて、日本に来ました。日本はなぜ多く優秀なデザイナーを育てられるのか、自分で答えを見つけたいです。

 神戸芸工大で活躍中のクリエイターに会え、先生たちの考えや仕事のやり方を もっと理解し、授業でクラスメートと一緒に専門のことについて話し、アイデアをシェア しようと思っています。

 そのほか、現代と伝統が混じり合って、活気に満ちた神戸での生活も楽しみにしています。日本の文化を深く理解するため、実際に人々と交流することは大事だと思っています。

 日本留学を通し、視野を広けて、専門知識を身につけ、日本デザインのことを学んで、 自分を成長させようと考えています。

留学中の体験

 日本に来て、既に8ヶ月が経ちました。芸工大で建築を学んで、一番心に響いたのは、日本は建築を一つの個体として考えるのではなく、周りにどのように影響するか、人々は環境とどのような関係を築きたいか、それらを大切にしています。芸工大の先生方は現役の建築士であり、専門家の視点から建築事例を解説し、自分が気づかなかった新しい発見をもたらしてくれます。日本に来て、わからないことばかりで、困っている時がよくありますが、学科の学科先生と国際交流課の職員さんがいつも優しく接してもらって、とても感動しました。

 休みの日、私は色々な町へ建築を見学しに行きます。日本中のあらゆる建築物の中に入って、写真や言葉に表せない空間体験ができ、授業で先生が説明した様々な理論を強く実感します。環境、建築、そして人々のつながり、ただその場にいるだけでデザイナーの意図が感じられます。茶室、神社、図書館、博物館など、素晴らしい建築作品がたくさんあります。

 縁があって私は大工収蔵庫で数か月間働いていました。そこで昔の大工さんの作品を見て、その繊細さと巧みさに驚かされました。何ヶ月もかけて、一つのものを丁寧に仕上げる昔の職人の姿が目に浮かびます。作品を見た瞬間に、感動しました。また、仕事のとき、上司はいつも丁寧に仕事内容を説明し、外国人の私のため、専門用語の意味を説明してくれます。今年の夏休みに高松へ旅行に行きましたが、上司の実家ということで、ガイドとして付き合ってくれました。とても嬉しかったです。栗林公園と屋島は綺麗でした。うどんも本当に美味しかったです。

 また、学校でボランティア募集のチラシを見て、神戸市のしあわせの村でのボランティア活動に参加しました。しあわせの村は神戸市民のために、だれでも利用できる総合施設で、各年齢層の方々、子供、高齢者、障害者が集まって交流できる場所です。あそこで地元の人々と交流し、日本の福祉制度をもっと理解できました。日本のボランティア組織の制度や福祉サービスは非常に完備であり、とても驚きました。これによって福祉に関する知識をもっと知りたくなり、福祉住環境コーディネーターの資格試験を受けてみました。

 今まで多くの方々と出会って、言語の壁を超えて、お互いの考えを交流し合いました。みんなに優しく接してもらって、助けてもらって、本当に自分は恵まれていると感じます。今までの8ヶ月間は本当に充実した日々でした。

留学の成果、将来の目標

 一年は短く感じられたが、同時に長かったようにも思えます。この一年間で経験したことは、2年にも匹敵するほど充実しています。私は日本の建築について深く学びたくて、ここに留学しに来ました。この一年間を通して、予想していた建築計画や設計プロセスなどの勉強に加えて、福祉住環境とパッシブデザインに関する知識も学びました。例として、岐阜市みんなの森ぎふメディアコスモスや犬島精錬所美術館など、パッシブデザインに取り組む施設では、自然換気や地元の材料を活用した環境に配慮した、省エネの建築が行われています。また、日本はバリアフリーやユニバーサルデザインを重視している国と思われていますが、実際にどの程度の取り組みが行われているのか、私まだ知りません。しかし、この一年間の体験を通じて、日本の福祉住環境は非常に整備されていると感じました。デパート内での筆談対応や施設前のスロープ、駅のトレイ前の音声案内など、さまざまな場所で各団体への配慮が見られました。その心遣いに感銘を受けました。さらに、福祉住環境コーディネーターの受験勉強中に、制度の成立について学び、これらの制度が何十年もかけてどのように変遷し、改善されてきたかを知りました。ユーザーの声を聴き、問題を発見し、解決するために条例を何回も直し、私はその姿勢に感心しました。

 私は日本中を旅行しました。授業後に友達とメリーケンパックでコーヒーを飲むことの気持ちよさ、北野異人館で過去の人々の物語を観察すること、後楽園で日本庭園の美しさを感じること、広島平和記念資料館で受けた衝撃、福岡タワーや布引ハーブ園から見下ろす、感じた港町の美しさ、桂離宮の建築を見学する時、過去の職人の技を知ること、金沢の21世紀美術館での奇妙な空間体験など、写真や本では感じられない、その場所ならではの雰囲気を実際に体験しました。その旅のうちに、日本の歴史建築物はとても良好状態で維持されていることを気づきました。それのみならず、日本の博物館の数にも驚きました。市立の地域博物館はもちろん、玩具博物館、醤油博物館、漫画博物館、名人の記念館などさまざまな種類の博物館があり、これは日本人が文化財や世界遺産を大切にしている証しであると思います。これまで他の国で歴史の場所を訪れた際には、歴史建築物は保存されているものの、その状態が良くないことが多く、柱が腐食していたり、キズがついていたりすることがありました。しかし、日本の文化遺産はその時代の価値観を反映した修復が施されながら守られてきました。これにより、後世の人々も何百年も前の素晴らしい作品に触れることができます。

 この一年間、様々な分野にも触れ、幅広い芸術工学の知識を得ました。色んな方と交流により、日本人の振る舞いに潜んでいる考え方や文化に触れ、形成された建築作品を単に技術的に理解するだけでなく、建築士はこれらの作品を通じて、どんな思想を伝えようとするのか、深く理解することができました。

 留学前は緊張と不安でいっぱいでしたが、学校の国際交流課のスタッフと学校の先生のサポートにより、すべての困難は問題なく解決でき、とても感謝しています。日本に来て、学びたいことや体験したいことをすべて実現でき、とても満足しています。

 これからは勉強してきた知識を活かし、日本の手法を参考にしながら、マレーシアの建築環境、福祉住環境、そして歴史文化財の保存に力を注ぎたいと考えています。